【簡単】年金の繰上げ・繰下げ 最適受給年齢判定図




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年金は65歳から受け取れますが、希望者は60歳から繰り上げ受給したり、70歳から繰り下げ受給したりできますよね。

早めの60歳から受け取ったら毎月の受給額は減少し、70歳からもらうなら増加します。

しかしその損得勘定が難しい・・。最大額の年金をもらうには一体何歳から受給すればよいのか?と悩むシニアも多いと思います。

そこでガッツリと計算して精密かつ簡単な判定表を作成し考察しました。

前提条件

繰り上げ・繰り下げともに、受給開始年齢と受給額の関係自体は単純明快。

65歳を基準とし

  • 1カ月早くもらうごとに月間受給額が0.5%減らされる
  • 1カ月遅くもらうごとに月間受給額を0.7%増やしてくれる

たったこれだけ。

しかしながら、

  • 受給できる期間の変化
  • 受給額の変化

この2つが相互に絡まりあうと事態は急に複雑化します。

「長くもらえるけど毎月の額は減って・・・短くしか貰えば1回あたりはたくさん貰えて・・・結局どっちが良いんだよ!!と放り投げたくなると思います。

かといって怪しいコンサルタントに相談するのも考えもの。商売人は必ずと言っていいほど特定の方向に誘導しようとするものです。保険を売りたいから不安を煽る、早く預金して欲しいから繰り上げ受給を勧める、なんていかにもありそうな話です。

何事でも一番良い方法は、客観的事実だけを頼りに自分自身で判断すること。 そこで当ブログは、その助けとなる簡単な図を作成してみたわけです。うちはアフィリエイト等はやっていないので、安心してバイアスが無いと思って読んでください。

図の作成方法

この項目は読み飛ばしても大丈夫です。一応客観性をを持たせるために書いているだけなので、面倒なことが嫌いな人は読み飛ばしてください。

図は下記の方法で作成しました。

  1. 受給開始年齢として60歳~70歳までを1カ月単位で区切る
  2. 寿命を60歳~90歳まで1カ月単位で区切る
  3. 年間受給額を仮に100万円とする
  4. 受給開始年齢と寿命の全ての組合せについてトータル受給額を算出
  5. その数字を基に見やすいように描画
  6. 運用利回りは考慮せず
  7. 「全ての寿命年齢」に対してそれぞれ最大額の年金が貰える受給開始年齢を「最も有利なライン」としてプロット

受給年齢判定図

仮に年間年金額が100万円の人の場合、その結果はこの図となります!

受給年齢判定図

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パッと見たら一瞬身構えてしまうかもしれませんが・・使い方は至ってシンプルです。

(「最も有利なライン」がワープしているのは気にしないで大丈夫です。一番最後の「おまけ」で説明しているのでご興味あればどうぞ。)

受給年齢判定図の使い方

まずは寿命を想定しないと何も始まりません。自分の寿命など神様にしかわからないことですが、とりあえず想定します。

話を進めるために、仮にここでは自分の寿命を80歳と予測したとしましょう。

そうすると、この図をからわかることが2つ。

(寿命が80歳のとき)

  • 66歳8カ月目に年金受給開始(1年8カ月繰り下げ)が最も有利
  • トータルの年金受給額は約1529万円 (年間受給額が100万円の人の場合)

どうやってわかるのか?この図はこのように使います。

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3ステップでわかります、 寿命年齢のところから右に行ってぶつかったら上へ。

この図さえあれば数字だらけの早見表など必要なし!

なお青線のボツボツは1個1か月の幅を持っています。

一つだけ注意点があります

これは年間受給額100万円の人の場合ですが、当然人によって受給額は異なります。金額は全て正比例するので、例えば年間200万貰える人は2倍に、50万円貰える人は半分に変換して読み替えればオッケーです。掛け算しやすいようにちょうど100万円で作っただけです。

寿命の見積もりについて

寿命さえわかってしまえば簡単に最適な受給年齢は割り出せるわけですが、問題は自分の寿命がわからないことです。

年金や保険を設計する側なら上図を統計処理すれば済みます。でも私たちの関心ごとは平均値や分布ではありません。「たった一つの自分の命がいつまであるのか」という一点のみですよね。

とりあえずは、図から確定的に言えそうなことが2つあります。

  • 71歳9カ月より早く死ぬ自信があるなら目いっぱい繰り上げ(60歳受給)
  • 88歳8カ月より長生きする自信があるなら目いっぱい繰り下げ(70歳受給)

この間にある寿命年齢を予測するのが非常に悩ましいわけですが・・・これに明確な解決策はありません。せいぜい自分の健康状態や血縁者の享年から推定するくらいでしょうか。

寿命予測を外して損が出るのは、どうしても避けられないことです。

しかし心理的な側面を考慮することで少しだけ有利になる方法を考えました。

間違って長生きするより間違って早死にする方がマシ

自分の予測寿命と実際の寿命が大きく乖離しないのが有利(=なるべく青い線の近くで寿命を迎えるのが有利)ということは明らかですよね。

大きな損失が生じるのは自分の予測と大きく異なる年齢で死んでしまう場合ですが、これには2通りありますよね。

  • A:予測より大幅に早世してしまった場合
  • B:予測より大幅に長生きしてしまった場合

の2パターンです。

自分がどちらになるのかは神のみぞ知るです。予想を外した金銭的損失の多寡も色々変わります。

どうせわからないんだから、もし予想を外してもなるべく人生の満足度が高くなる方を選択するべきです。

年金受給を最大化する目的はより良き人生を送ることなのですから。

そこで例を挙げて、80歳と予測した時70歳で早死にしたパターン90歳まで長生きしてしまったパターンを考えます。

A:80歳と予測した時に70歳で早死にしたとき

80歳予測の最適年金受給開始年齢は66歳6カ月。これで70歳で亡くなると394万円を手に入れることとなります。

もしこの人が正しく70歳と予測していれば年金受給開始年齢を60歳0カ月としたはずで、その時の受け取りは700万円になるはずでした。

つまり差引き306万円の損失になります。

B:80歳と予測した時に90歳で長生きしたとき

80歳と予測した場合は上と同じく最適年金受給開始年齢は66歳6カ月。これで90歳で亡くなると2646万円を手に入れます。

しかしもしこの人が正しく90歳と予測していれば、年金受給開始年齢を70歳0カ月に定め、受け取りは2840万円となるはずでした。

差引き194万円の損失があったことになります。

金額だけで見ると損失が306万円の早死にパターンより、損失が194万円の長生きパターンの方が得です。

でも、単純な数字や金銭だけで判断するのは適切ではないと思います

70歳でも90歳でも、亡くなる間際のベッドで

「ああ、悔しい。受給開始年齢を60歳にしておけばあと304万円使えたのに。・・・ガクッ」

みたいなことを本気で考えるでしょうか?私にはどうしてもそう思えません。

死を目前に控えた時、年金受給額の多寡よりももっと別のことを考えると思います。これまでの人生の事とか、残された家族の事とか。こんな寿命予測ゲームのことなど頭の隅っこにしかないと思います

70歳死亡の時は話がここで終わります。多少の悔しさはあれど大往生しました。

問題は90歳死亡の時。

この場合、予測を外してからもずっと生きていくわけです。そしてきっと80歳を少し過ぎた頃からこう思い始めます。

「ああ、あの時受給開始年齢を70歳まで我慢していたら、今より毎月23000円の余裕があったのに。」

「なんで目先の金欲しさにもっと繰り下げ受給しなかったんだろう」

と。

お金に余裕があれば良いですが金欠になるほど悔しさが大きくなり、80歳過ぎのあなたの頭には得られなかった23000円の事がちらつくはずです

お金が無くなって年金支給日を心待ちにしているとき、常に悔しさがこみ上げてきそうです。

この事は人生のトータル幸福度を若干下げるのではないでしょうか。

どうせ予想を大きく外すなら、後悔の念が出てきそうな長生きパターンより早死にパターンの方がマシに思えてきます

これを前提に、受給開始年齢を選択するときの考え方としては。

自分の予想より心持ち「繰り下げる=受給開始を遅らせる」のが人生の幸福戦略的には正しいといえるのではないでしょうか

結論

この記事の結論をまとめます。

  • 受給年齢判定図によって予測寿命に対する受給額と最適受給開始年齢がわかる
  • 人生の幸福度を考えるなら、受給開始年齢を遅らせる方向で。

念のためもう一回貼っておきます。

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以上参考になりましたでしょうか。

それでは良きリタイアライフを。

おまけ:79歳前後の特異点

ここから先はオマケです。

なぜ受給年齢判定図の最適ラインが突然ワープしているのかを考察してみたのですが、これには79歳1か月という特異点に原因がありました。

下は寿命71歳10か月の人について、横軸に受給開始年齢、縦軸に受取総額をグラフにしたものです。

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そしてこれが78歳0カ月。

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そして79歳1カ月です。

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少し過ぎて80歳。

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この辺りの年齢層には極大値の山が2つ。山が2つあるということは、繰り下げにも繰り上げにも局所的なピークがあるということですね。

78歳くらいまでは繰り上げ戦略のピークの方が高いので、繰り上げ戦略を採用することになります。80歳ならその逆で繰り下げ戦略が正しいことになります。

そして79歳1カ月は、ちょうど繰り上げ戦略と繰り上げ戦略が入れ替わるとき。これが最適受給開始年齢が急にワープする理由です。

・・とまあこんなことはマニアックな話なのですが。

もう一度79歳1か月を見てみましょう。

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この辺りの年齢層は65歳が極値になっていますよね。

これは繰り上げ又は繰り下げのどちらかを申請しなければ、とっても損をしてしまう・・・ということです。

受給年齢65歳とは年金受け取り年齢の初期設定で、手続きをしなければ自動的に65歳受給開始となります。

そして最も寿命を迎える人が多そうな80歳前後がこの状況

これってもしかして・・・お国がこう考えて制度設計してたなら・・・?

「国民は面倒くさがりだからあんまり繰り上げ繰り下げの手続きはしないだろう。」

「よし!65歳受給の人がちょうど死にやすい年齢で損するように繰り下げ制度を作ろう!」

官僚って本当に頭がいいな!シンプルな2つのルールだけを定めてうまく自然に年金額を抑えるなんて。

鮮やかすぎです。腹立つというよりも感心してしまいます。

まあ偶然の産物かもしれませんが、一つのネタということでお見知りおきください。

それでは、また。

4 件のコメント

  • 年金考察、とても為になりました。

    頑張って手元の資金を運用するより、ただ受給を遅らせるだけで老後使えるお金が確実に増えるなら、例え早めに死んで支払った分の年金が回収できなくても、繰り下げを選択するのがよいと思っていたのですが、もしかしたら繰り上げで受給額をあえて少なくし、税金面で得するというのもアリかなと思い始め。健康保険料が安い地域に住むのも老後の生活費対策になると思うのですが、そういう小さな節約方法を突きつめた記事もお願いします!

    • >Uさん
      コメントありがとうございます!
      税金面までは考えていませんでした…。健康保険料とかの月額はちりも積もればで、重要ですよね!老後は会社もないし安くて快適な場所があればよいですね。
      僕もリタイアしたら色々放浪して探して記事にしてみようと思います。
      これからも当ブログをよろしくお願いします!


  • >5割
    >1,2割
    ここの数字がちょっとイマイチだったので。
    5割⇢7,8割(つまり生活費の大部分が年金依存)
    1,2割⇢4割前後(つまり年金依存割合が半分以下)
    くらいに変更したほうがよいなと、気づきました。
    依存割合が1,2割というと国民年金6.5万円の8,9倍の試算収入がある人になってしまい、あまりに少数派ですよね。。。汗
    連投しつれいしました汗

  • 一つ思ったのですが、年金受給に生活費の何割を依存するかでも事情が変わるのかなとおもいました。
    例えば生活費の5割以上を年金に依存するならば、今回の記事のように経済合理性を主眼におくことがふさわしいと思います。
    一方、1割とか2割り程度しか依存せず、基本的には自己資本の利回りや取崩しでカバーできる人もいますよね。
    この場合は、また違うみかたもあるのかなと。例えば、繰り上げ受給開始後からはベーシックインカムが入ると思えば、自己資本への負担がノーリスクで軽減されますよね。取崩しスピードを緩やかにできるはずです。そうすると、経済合理性で劣ったとしても、精神的合理性ではメリット大ではないかなと。
    他の要素として、、
    年金額はマクロ経済スライドとかなんとかいう理由で変動しうる=試算時点での資産が将来の経済合理性を約束するとは限らない。
    経済合理性は理想(仮想最適状態)との乖離の度合いにすぎないので、現実にはなじまないこともある。最適状態にくらべて損をしていても、金額的に個々人の家計をカバーできるのなら、繰り上げ受給で早期に利益確定するのは決して馬鹿ではない。
    色々考えると、おもしろいですね。
    繰り下げ受給が絶対正義、という風潮に自分が逆張りしたいだけかもしれませんが笑

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