アーリーリタイアやFIREを目指す者が一番気になるのは、もちろんお金の話です。
- いくら貯めればいいのか?
- どうやって運用すべき?
- リタイア後の生活費はどうなるだろう?
当ブログも含め、ネット上にはリタイア資金管理の解説記事が溢れています。しかし一方で、リタイア後の生活そのものにフォーカスした記事はあまり見つからないんですね。すなわち、FIRE成功者の多くはリタイア後も下記のような情報を発信しています。
- リタイア資金の運用レポート
- 保有不動産等に関すること
- 金融や経済の話題 etc.etc..
リタイアしてもまだお金の話をしてる!
多分資産運用や蓄財を趣味として続けているのだと思います。
でもブログ主は、リタイア資金が貯まったら1秒でも早くお金の話とオサラバしたいです。それは、
資産増殖は手段。目的そのものではない。
と考えているからです。FIREして自由時間を増やすために必要なお金を用意しているわけですからね。いずれは お金中心➡生活・自由中心 へと思考の軸足を移す時が来るのでしょう。
そういう訳で今はまだ漠然と考えたり調べている段階ですが、リタイア生活を考えるにあたって「高等遊民」という存在が気になったので記事にしました。
高等遊民とは何か
字面だけではイマイチわからないこの言葉。明治時代に作られた言葉らしいですが、なんか雅やかというか、超然と暮らしてる感じがします。意味的にはそのまんま、
高等な遊民
この「高等」と「遊民」はいったい何を指すのでしょうか?
「高等」の意味は?
高等というのは、教育程度・知識・教養が高いということを指します。特に大学生や大卒者を指したようですが、学歴のみならず高潔さとか幅広い教養というニュアンスも含みます。「学士様」とも呼ばれて周りからは尊敬されていました。
学士様はどのくらいいたの?
明治時代は大学に行く人はほとんどおらず、大学進学率はなんと1%以下。庶民はなかなか通うことができませんでした。お金持ちの子息が多かったんですね。
国民のごく少数しか世界に通用する教育を受けていない時代だから、学士様は国や産業を引っ張っていく役割を期待されていました。
【参考】~学士様を現代の感覚にすると~
例えば東大生、京大生、医学生を足し算したら概ね人口の1%になります。
今の高校生1学年当たり人口:110万人
東大生(3000人)、京大生(2500人)、医学生(5000人) *数字は大体です
逆立ちしても絶対合格できません!
エリートっぷりがわかるな
まとめると、
お金持ちの子息で しかも教養や勉強も凄くできる人たち
という感じですね。
「遊民」の意味は?
「遊民」という言葉、これはまあ、「仕事もせずフラフラしている人」みたいな感じです。現代人はほとんど使いませんよね。
- 本人が望んでのことなのか?
- 単に仕事がなかったのか?
この辺りは区別せず、いずれにせよ何も生産していない人。今風にいうと「ニート」に近いです。
遊民は当時相当嫌われていたようで(今もか?)、かのマルクスは遊民をルンペンプロレタリアートと呼ぶ中で「最下層の腐敗物」などと酷評しております。
散々な言われようですね・・・
FIREニートを目指す者にとってこれはつらい><;!
高等+遊民
すなわち、高等遊民というのは
高度な教育を受けたくせに仕事もせずフラフラ
≒ 「(超)高学歴ニート」
といった感じに言い換えられるでしょう。特にネガティブな文脈で使われることが多かったようです。
- 金持ちの家に生まれ、
- 人口比1%の高等教育を受けたのに、
- 親の金でフラフラしていて、
- いつも理屈を言うばかり。
そりゃ叩かれるというものですw
しかし!現代のニートとは違って「フラフラしてる」の内容が高尚なんですね。
- 当時流行の文芸活動
- 俳句
- 芸術活動、哲学 など
まあこれらは当時のモテ要素だったので、ぶっちゃけ
モテたいためにイヤイヤやっていた
層も相当数いたと思います。
でもそのおかげで傑作が生まれ、文化が進むという面もありました。
ちゃんと役に立ってたんですね
元々頭のいい人たちですからね!
海外の高等遊民
ところで、高等遊民的活動は明治時代の日本特有のものではありません。例えば哲学を発展させた古代ギリシャ人は奴隷に労働を任せて自分は哲学に耽っていました。17~19世紀の急速な科学発展も、欧州の有閑階級が暇すぎて見つけてしまった!というような科学研究成果が相当あります。
世界のどこにおいても、どの時代においても、格差社会の上の方にいる暇人たちが文化や科学を進めてきたんですね。
まあ仕事が忙しかったら目の前のことで一杯になるもんな
その中で、ブログ主が恐らく世界最強の高等遊民だと思うヘンリー・キャベンディッシュ卿という人物を少し紹介したいと思います。
世界的高等遊民 ヘンリー・キャベンディッシュ
この絵に描かれている気難しそうな人がヘンリー・キャベンディッシュ(1731-1810)です。高等遊民というか偉人です。日本ではイマイチ有名じゃない彼ですが、ざっくりとキャラクター紹介しますと・・・
・貴族。現在価値で100億円程の資産を保有
・お金に全く興味無し。資産運用を勧める銀行員にブチ切れ
・物凄い人見知り&寡黙。召使いの前にすら姿を現さない独身男
・科学大好き。ひたすら引きこもって研究に没頭
キャベンディッシュは資産継承タイプの大金持ちなので、その点は我々叩き上げFIRE者とは異なるわけですが、それでもシンパシーを感じざるを得ない性格&変人っぷりです。それだけではなく、発見した科学の業績が凄すぎるんですね。
・水素を発見
・アルゴンを発見
・水の合成法を発見
・地球の比重を割り出した(≒万有引力定数)
・オームより先にオームの法則を見つけた
・シャルルより先にシャルルの法則を見つけた
・クーロンより先にクーロンの法則を見つけた
さて赤字の3法則についてですが、キャベンディッシュが先に見つけたのにキャベンディッシュの法則にならないのか?と思いますよね。実は、彼は発見していたけど発表しなかったんです。オーム、(ボイル)シャルル、クーロンの法則とか、中学・高校の教科書に載っているような有名なものですよ。
内容はよく覚えてないが!!
もし彼が発表してたらさらに物凄い名誉が得られたでしょう。でもこれらの業績は、彼が一人寂しく死んだ後に発見されました。
キャベンディッシュは幸せだったのか?
莫大な資産を持ちながらも科学研究以外にはほとんどお金を使わず、しかも人を遠ざけて…孤独に研究していたキャベンディッシュ。せっかく発見したミラクル級の発見も遺稿となり、召使いに一言だけ残して、最期は誰にも看取られずに亡くなります。
彼の人生は幸せだったのか?というと・・・きっと「寂しそう」「なんか可哀想」という印象を持つ人もいると思います。
でもブログ主は、、、
キャベンディッシュはめちゃくちゃ幸せだった
と思います。莫大な資産は結局は使わなかったけど、
- 嫌な事(対人、投資)はせず
- やりたいこと(研究)だけをやっていた
そんじょそこらの貴族ならこうは行きません。家を守るために社交したりビジネスしたり、まあ貴族や華族も楽ではないわけですよ。でも彼は自分を突き通しました。
お金とか名誉とかも全然求めてなかったんだと思います。人にどう思われようが関係なし。
彼のモチベーションや判断基準は全て彼自身でした。
キャベンディッシュと私は月とすっぽん。全然レベルが違うのですが、彼の生き様は理想的なアーリーリタイア精神なんじゃないか、と思っています。
高等遊民の評価
話は戻り、日本の明治時代の高等遊民の話です。「漱石文学における高等遊民について(*池田光博, 国語教育研究7号(1963), pp129-131)」では、高等遊民のことを上手くまとめています。
1. 遊民である以上職業をもたない。その前提として、財産(金)がある。
2. 現実の社会から自己を疎外して超然生活を送り、自らは社会の傍観者の位置にいる。
3. 豊かな教養と組織立った思想を持っている。一流の知識人なのである。
漱石文学における高等遊民についてを基に当ブログが編集
とりあえず1番と3番は置いておいて、2番がキモですよね。この傍観的態度については以下のような解説もあります。
傍観者には、当事者にない余裕とそれに伴う視野の広さ、あるいは、筋道の通った思考力とがある。これが傍観者の強みである。
めちゃくちゃ簡単に言うと
もう生活費は十分にあるし!
だからぶっちゃけ全部他人事だし!
それでいつもお前は冷静なのか
ってことですね。
仕事や金儲けをしてたら利益に直結する施策や団体を応援したくなります。逆にこちらの利益に反するものには腹が立ちますよね。株や外貨を持てばポジショントークがしたくなり、、、、属性とは実に不自由なものであります。
経済的に自由になり、世間に対していつも傍観者でいられること。それゆえに的を射た考えや行動を推し進められること。これがアーリーリタイアの最強のメリットなのかもしれません。
これを享受しないと勿体ない!
最後に:僕らは中等遊民になろう
冒頭にも書きましたがせっかくアーリーリタイアをしても株に毎日一喜一憂したり、それに関連して世の中に不満を持ってしまっては台無しです。できればリタイア後は高等遊民として超然と暮らしていきたい…。
ですが悲しいことに、我々一般庶民にはキャベンディッシュのような高い知能や教養が有りません。高等遊民の「高等」の部分がもともと欠けているのです。
ならば!
別に中等遊民でもいいですよね。
下手の横好きで楽器を弾いたり、面白くない小説を書いてみる。スマホゲームをしてもいいでしょう。適当な旅行記を書いてもいいでしょう。
もしキャベンディッシュの頭が超バカで、何一つ科学成果を見つけられなかったとしても・・・彼の幸福感は揺るがなかったのではないでしょうか。きっと喜んで研究をしていたと思います。頭の良し悪しは関係ないです。
ただ、日々の感情を激しく揺さぶるような投資活動は良くなさそうです。ポジションを取って世間の傍観者という気楽さを失っては、リタイアした意味がないと感じるのです。
そういうわけで、上述の高等遊民を参考に、勝手に中等遊民指針を作ってみました。
1. 遊民である以上職業をもたない。依拠はそこそこの貯金。
2. 社会の傍観者の位置にいる。というか逃げてきた。
3. 豊かな教養も知識もないが、それなりに没頭することもある。
4. 満足しているのでお金では転ばない。
ま、このくらいの緩さを目指してもいいんでないかな!きっと幸福感は高等遊民と遜色ありませんし。
でもリタイアできるまではもう少し、蓄財蓄財!
明日も貯金を頑張るぞ!?
\オー!/
最近の株高にビビりまくっている絶対仕事辞めるマンより
>ナルさん
いつもコメントをありがとうございます!そうですね。リタイア後も「中等遊民」的な、金のかからない面白いこと、楽しいことを発信していきたいです。もちろん下等遊民に落ちぶれないように節制しつつ…
好きで楽しんでやるならば、高尚なことでなしに、庭いじりでも犬の散歩でもソロキャンでも充分宜しいと思います。金のかからない趣味がたくさんある人が楽しいアーリーリタイアライフを送れるんでしょうね。