持ち家か?賃貸か?アーリーリタイア者の悩み




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アーリーリタイア計算シリーズ、今回は住居の検討です!

人生で最大の出費である住居費。この選択が人生に与える影響は甚大です。

この記事では

早期リタイア者は「家購入」「一生賃貸」のどっちがお得なのか?

を検討していきます。

併せて読みたい 前回までの試算記事たち

資金3000万・45歳でアーリーリタイアはできるのか?

資金2000万・45歳でセミリタイアはできるのか?

「45歳貯金5000万円持ち家無し」早期リタイアで逃げ切れるか?

「持ち家・賃貸論争」が荒れないために!

まず最初に、今回の検討に向けたスタイルを決めておこうと思います。

アーリーリタイア者ならずとも「持ち家か?賃貸か?」は多くの人にとって切実な悩み。それ故にこの論争は荒れる傾向にあります。

関連の掲示板やSNSではしょっちゅう罵り合ってるような…

はい。この原因は大きく2つあると思います!

原因1 ポジショントーク

すなわち、

  • うっかりローンを組んで損してしまったかも?と不安な家保有者
  • もしや家賃を払い過ぎてしまったかも?と不安な長期賃貸者

この2者が自己を肯定するために、議論や検討ではなく一方的な主張をする「弁護側」「検察側」に分かれてしまうのです。

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検討に当たっては自分の状況に関わらず、「どっちでも、得な方に付くよ」というスタイルを意識したいと思います。持ち家が有利ならリタイア後に家を買うべきですよね。

原因2 感情と投資損益の混同

例えば

  • 「家を持つと一人前になった満足感がある」
  • 「家を買っても隣人が変な人だったら悲惨」

といった、定量化できない感情による要素があります。これらの感情的要素は人生の幸福度に大きく影響するので絶対に無視してはならないのですが、これだけで購入の是非を判断するのは誤りでしょう。あくまで金銭的価値と合わせて総合評価すべきです。

こういった検討は

1.まず純粋に持ち家・賃貸の経済的損益を比較する

2.その後、その経済的差が感情的優劣で逆転するのか考える

という手順を踏むべきだと思います。

同時並行で話をするからケンカになるんですね

さらに2の部分は性格や経験で大きくブレるのですから、人によって結論が違って当然です。誤りを防ぐには、定量化できるものは定量化し、その上にフワフワしたものを乗っけていくということでしょう。

・・というわけで、まずは最初にお金の面だけ比較していこうと思います!

 ちょっと長いですが、計算の前提条件から!

スタート条件

厳密性の為にごちゃごちゃ書いていますが、面倒な人は適当に読み飛ばしてください

今回はアーリーリタイア者が多額の現金を確保しており、その後人生で持ち家を購入するか迷っている状態とします。

1. 初期費用は7000万円(可変)
2. 4000万円(可変)の物件を一括購入コース」と「同レベルの物件賃貸コース」を比較
3. 残る現金は年利1%で運用益を生み出す
4. リタイア後45年の期間で比較

1の初期費用は別に1億でも10億でも結果に影響ありませんので、適当に設定しました。

2の同レベル設定は客観的比較の為にいわずもがな。ただしローンではなく一括としているので、支払い金利はありません。あと4000万という額設定も結果に影響せず可変です。

3は拙ブログで提唱している専守防衛投資の堅い運用利回りです。

得意の優待クロス投資だな!

 

持ち家一括コースにかかるコスト

持ち家取得&運営にかかる直接的コストは以下の通りとしました。

・購入費 4000万円(土地1000万+建物3000万)
・固定資産税 (年1.4% 但し新築・非木造・小型の条件として減免措置有)
・修繕積立費/リフォーム費 月2万円

土地/建物 の比率は異論も出そうですが、マンションと戸建てで全然違うのでざっくりと。この比率は固定資産税算出に影響します。

修繕積立費はネットで事例を探して決めました。

年1.4%の固定資産税って悪魔的に高いよな・・

実際は建物部分が1/6に減免されたり、新築期間はもっと安くなったりします

あと、この他に

建物部分の経年減価

を潜在的コストとして計上する必要がありますが、この減価率は法務省による非木造家屋経年減点補正率基準表を適用しました。

簡単に言うと、家が古くなると必ず売却損がでるので、それを含めるということです

建物部分は年が経つごとにこの比率で価値を下げて財産の評価額とします。土地は経年変化なしとしました。

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初期費用が7000万円なので、4000万円の家を購入すると残金は3000万円。ここから固定資産税とメンテナンス費の支払いをしていきます。手元に余ったお金は年利1%で運用されます。

賃貸コースにかかるコスト

賃貸コースに計上したコストは下記の通りです。

・家賃 月額試算法は後述
・敷金/更新料 入居時敷金1か月分、2年後に更新料1か月分
・引越し代 4年に1回 20万円

それぞれの根拠について補足します。

家賃の試算について

家賃の設定は少々厄介です。大原則として、

比較先の購入物件と同レベルの賃貸に住み続ける

としなければ平等な比較になりません。しかし例えば4000万円の新築物件に賃貸で入るとして、その家賃はいくらくらいなのでしょうか?

5万円なら安すぎるが、10万円のような気もするし、20万円は高い気がするし…。

そもそも競合物件の有無など詳細がないので難しいところです。

そこで、不動産投資でよく用いられる収益還元法の考え方を使いました。持ち家というのは、究極的には「自分が保有する収益不動産を自分自身に貸している」ということです。よって比較に用いるべき適性家賃は

その時点の土地建物評価額 × 地域の適正な不動産投資利回り

と試算すべきです。この適正な利回りはネットで見つけた「二十一鑑定」という不動産鑑定会社が取った(?)全国統計を準用し、ひとまず赤く囲った6.0%と置きます。

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つまり、例えば4000万円の新築物件に入居したらその6%を年間の家賃として支払いますので、年額240万=月額20万円を家賃として計上します。

しかしこの利回りというのは曲者で、実は少し動くだけで結果に滅茶苦茶影響します。

地域でかなり違うよなぁ… 都会に行くほど低いですね

そもそも「本当に不動産投資で6%も出せる?その他地域の8.8%って絶対無理じゃない?」という疑問もありますし、表でも都市部だと4%台になっています。でもとやかく言っても仕方がありませんので、とりあえず全国平均の6%で設定して進みます。「とりあえず」というところを覚えておいてください。と・り・あ・え・ず!

敷金/更新料の試算について

これについては特記ありません。まあこんなものでしょう。腹が立つけど払うしかありません。

引越し代賃の試算について

4年に1回も引越しをしている理由ですが、これは大家さんと入居者の力関係を考慮したものです。1年目は4000万円の物件に入ったとして、10年後にこの物件の価値は2割~3割は下落します。しかし、その時大家さんに「今年から家賃3割引きでお願いします」と言ったところで応じないでしょう。

いやー せいぜい5,000円引きですよ

嫌なら月末までに退去してください

と言われるのが関の山。なんだかんだで入居者は交渉力が弱いです

僕たち、資本家に逆らえません…!

そういう訳で、恐らく現実的には家賃相場に乗っている物件に引越して新規契約しても大して変わらないんじゃないかと思いました。試算では4年を1サイクルとして、

  • 1年目頭 引越し代&敷金を支払う。物件価値×収益利回りの家賃の物件に入居
  • 2年目 家賃を払うだけ
  • 3年目頭 家賃と更新料1か月を支払う
  • 4年目 家賃を払うだけ
  • 5年目頭 退去&その時点の物件価値×収益利回りの家賃の物件に入居。引越し代&敷金 支払い
  • 契約中での家賃減免はなし

というサイクルにしました。

試算結果

以上、厳密性のため手法の説明が長引きました…。とにかくそのような条件でグルグルッと計算したところ

45年目時点で持ち家の方が1477万円お得!

という結果になりました。一応見た目おぞましい計算シート画像も貼っておきます。スマホでは絶対見えないと思いますが。

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ちなみに経過年数と持ち家/賃貸 損益をグラフにすると下のようになります。プラス側だと持ち家の勝ちマイナス側だと賃貸の勝ちです。

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年を追うごとに持ち家がどんどん有利になって、持ち家の圧勝!

一方の賃貸者は高い家賃を支払い続けて苦境に立たされ、最終的には1500万円近くの差がでています。
しかしちょっと待っていただきたい!!話はここで終わりません!

 

収益還元率を変えてみた結果

家賃設定の条件説明でも触れましたが、この試算は収益還元率の設定によって大きく左右されます。本当に不動産収益は全国平均で6%もあるのか?換言すれば不動産価値4000万円の物件に家賃20万円を出すことは適性なのか?という疑問もないわけではありません。しかし統計は統計です。世の中はこれで回っています。でも、余裕資金を6%を前提に実物不動産に投じられるものだろうか…?

そこで、同じ統計書で利回りが少し低めに出ている微妙な田舎部(失礼)の5%、及び都心部の4%で計算したところ

微妙田舎5% → 引き分け

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都心部 4%→ 賃貸の圧勝

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結果がこれほど違ってくるのもは当然と言えば当然で、物件価値の4%を年間家賃で支払うのと、6%では家賃が1.5倍違いますからね。

家賃20万と13万じゃ生活も全然違うもんな

そして、4%, 5%, 6%のどれが正しいとも言えません。逆にどれが間違っているとも。

強いて単純化して言えば絶対的なものではありませんが、

都心のオレは賃貸!

田舎の僕は持ち家!

ちょっとした地方部では・・・まあどちらでも!

といった形とも言えなくはありません。しつこいですが、強いて言えばです。

結局のところ、

持ち家と賃貸の有利不利というのは市場原理によって大体引き分けになる

と思いました。 まさに神の見えざる手 (アダムスミス)であります。

結論:地域の収益還元利回りは非常に支配力が強いから絶対要チェック

感情的価値の上乗せ

さて、持ち家と賃貸の間ではっきりとした経済的な差はなさそうだということが分かりました。ならば、結局は冒頭に述べたような感情的価値や個々の状況で決めるのがいいのでしょう。

筆者もまさか感情論が決定打になるとは思いませんでした!

金銭的要素に関係のないものを思いつく限り羅列します。

【持ち家のメリット】

自由にカスタマイズ可能!

年を取っても住めるので安心!

人からの信用が得られる!自慢できる!

安定感・精神的充足感!

【賃貸のメリット】

気が向いたら引き払って別の土地に行ける!

災害ダメージが限定的で気楽!

それぞれのデメリットは、相手方のメリットの裏返しを考えればいいですね。例えば、「賃貸は自由にカスタマイズできない」と読み替えればよし。それぞれをにらめっこして、心からいいと思うほうを選びましょう。

筆者の場合

筆者はどっちがいいかというと… やっぱり賃貸の自由さが勝る気がします。ブラック企業から解放される自由を求めて、あらゆる不自由に17年も耐えてきたのですから…。

家族はおらず、リタイアしたら仕事もしない浮草人生。ならば極限まで自由に生きてみたいですね。

日本に飽きたら海外のコンドミニアムを借りて… たまには数か月間ホテル暮らし。家を捨てて軽キャンピングカー全国行脚の旅、みたいなのもやってみたいです。持ち家に資金を投じるとこの辺りの希望が不自由になる気がします。

一方で家族もちの人や、社会でずっとやっていく人は、やはり地域に根差した持ち家を選択するのかもしれません。奥さんからの評価も違ってくるのでしょうし、どっしりと生きるにはやはり持ち家でしょう。

結局は人それぞれだ。 生きてるうちは全部好きに生きろ!

でも、人の生き方を非難するのは良くないことですよ!

まとめ

まとめます。

  • 持ち家と賃貸の明確な優劣は存在しない
  • それはおそらく市場原理による収益還元率調整のせいである
  • ただし地域性も見られるので、個別に経済損益を試算するのも良
  • 結局、深く考えずに好き嫌いで決めるのが幸せなのかも

こんなところでしょう。

長い記事でしたがお読みいただけありがとうございました。

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1 個のコメント

  • 興味深く読ませていただきました。

    昨今の賃貸は保証会社が必須の物件が多いです。
    そして年金受給前の年齢であれば、定職に就いていることが大手保証会社の与信審査の項目になっています。
    (もちろん無職OKの保証会社もありますが、入居者属性の良いマンションでは審査が厳しい保証会社しか使われない傾向があります)
    なのでアーリーリタイア希望者に限っては、賃貸のデメリットが大きくなるように感じます。

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