FIREムーブメントを日本の指数で再計算




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下記記事の続きです。

 

アメリカのミレニアム世代が一大旋風を巻き起こしているアメリカ版早期退職活動「FIREムーブメント」が日本でも通用するかの検証をしていきたいと思います。

前回のおさらい:FIREムーブメントの概要

FIREムーブメントでは下記の戦略を立てて早期退職に臨みます。

  1. リタイア後の年間消費額を決める(例:240万円)
  2. その240万円を4%で割る (= 例 6,000万円) いわゆる4%ルール
  3. 6,000万円を貯金
  4. 早期リタイアを決行。75%を株式に、残り25%を債券に投資
  5. そうすれば30年以内に資金が枯渇する確率は0~2%なのでOK 
  6. この根拠はとある経済論文であり、下表の赤囲みが早期リタイア成功確率

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この論文では1926年~1997年のS&P500指数による利回りと米国債の金利を採用しています。

すなわち1926年から1997年の間ならば、どの年のどの月にリタイアしても、株75%と債券25%の投資を始めていれば30年間は資金が枯渇せず暮らせた、ということを示します。

仮に株を100%にしていたら、「投資を始めるべきではなかった月が期間内に2%ほどあった」という意味になります。

この戦略はかなり攻撃的で楽観的な感じがするので、まずは日本市場の数値を用いて再計算することとしました。

日本に置き換えた試算結果

1. 置き換えたデータ

  • S&P500 → 日経平均
  • 米国債 → 日本10年国債(国債未発行の1965年以前の利回りは6.86%(1966年)とする)
  • 解析期間 : 1951年5月~2019年11月
  • インフレ率 : 消費者物価指数(総合)

2. 目標リタイア期間

早期リタイアブログなので、目標リタイア期間は長めに20・30・40年間の3パターンとしました。

例えば40年間で計算する場合、1951年5月~1991年4月、 1951年6月~1991年5月・・・と1カ月ずつずらしながら逃げ切り成否を全て判定し、(成功した月数)/(試算した総月数)が成功確率となります。すなわち、最も新しい試算区間は40年目標の場合1979年12月~2019年11月となります。

過去のデータから確率を割り出すのでどうしても古いものが入るのですが、この点は後で考察します。

3. 試算結果

試算した結果です。

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4%ルール、株式75%・国債25%で30年間リタイアする場合、

逃げ切り成功確率90%

という結果となりました。100%ではないにせよ、まずまずの結果です。

しかしこれをうのみにしてはいけません。考察が必要です。

本当の結論は全然違ってくるというところまで説明させてください。

分析結果を詳しく見ていると、

  • 日本特有の事情(失われた30年の存在)

によりこの「株75%債券25%」は最適とは程遠い投資だということがわかりました。

続きます


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2 件のコメント

  • 物凄く詳細なコメントをいただけありがとうございます!
    リスク許容度は実に、性格がでるものだと思いますね。僕は小さなことでかなりクヨクヨする性格で、株を持っていたらなかなかドーンと構えることもできず… 心の平安が得られるような副収入とか、思考の醸成ができればよいのですが。ちなみにブログ収入はずっとゼロですwほとんどアクセスもないのでコメントいただける事自体が感謝感謝です。
    日本の株式に置き換えたのは自分でも少々強引だなとあとから思っていて、日本市場を必ずしも選択する必要はないですからね。色々と書き換えたいなあと思っている箇所も多いです。本来は世界インデックスや米国インデックスが正解でしょうね。最近のFIRE若手はSP500にしている人も多いようです。リタイアを前提にすればドルをそのまま使えるし為替リスクも緩和できますね。
    何はともあれいつもありがとうございます、今後とも拙ブログをよろしくお願いします!

  • ためになる投稿いつも拝見しています。
    自分も氷河期育ちで、毎回共感しています。やはり我々氷河期は氷河期らしさがにじみ出るのかなと(笑)
    個人的にもFIREムーブメントの過熱ぶりにはやや懐疑的であり、このような批判的記事は考える切っ掛けにもなるので重要と思います。
    本シリーズの記事をより完璧にするために、いくつかコメントすることをお許しください。
    (1)メンタルリスク(リスク許容度)について
     アーリーリタイア後に株式75%の投資をして精神が休まる暇がないようでは、心の平穏のない生活になってしまう、というのは自分も同意します。
     この点は、リスク許容度の個人差という論点に集約されるように思います。リスク許容度は、年齢、家族構成、収入、金融資産などが主要要素といわれていますが、仕事絶対仕事やめるマンさんは、ブラック企業サラリーマンの細く長い給与収入(失礼お許しください)がメインだからこそリスク許容度が低いのではないでしょうか。あとは性格もお有りかと思いますが。
     邪推ながら、このブログなどで収益が上がってくれば、自ずとリスク許容度も上がってくると思います。そうすると、75%とはいわずとも、50〜60%程度の株式比率で十分に耐えられるようになるのでは、と個人的に思っています。
     
    (2)投資対象について
     SP500を日経平均に、米国債権を日本債権に置き換えることは、直感的にはわかりやすいです。しかも投資初心者にとっては(今の時代には不正解だと知らずに)そうしてしまう選択肢と思います。
     しかし現在においてFIRE適用をしようとする日本人であれば、最低でも時価総額加重平均タイプの米国インデックスか全世界インデックスで運用すると考えます。経済成長率と長期世界分散投資とで考えれば、そうせざるをえないはずです。あとは為替リスクと二重課税負担をどう織り込むかですが、為替は下手にスワップを狙わずにドルコスト平均法で日本円に戻し、二重課税負担は引退後も一定以上の所得を得てなるべく取り戻す、ということになろうかと思います。
     歴史的に見れば、敗戦国の日本の日経平均と戦勝国の米国のSP500を同視することは難しいように思います。バブル期前後を含む日経平均に投資するというのは、現在でいえば、BRICS等の途上国一国の株価指数に投資しているのと同視しうるリスクがあるように私見では思います。
     日本版FIREの記事自体はそれ全体でまとまった良質な記事であり、大変勉強になりました。個人的には上記の点も考慮いただければと思います。

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